なぜ日本では、夏に怪談話をするのでしょう?アメリカでは怪談話をするのが多いのはハロウィンです。 

夏は死者の魂が帰ってくる季節だからです。 

 ホラー映画が公開されたり、雑誌やテレビで心霊特集が組まれたりと、日本の夏は怪談の夏といえます。恐怖にゾッとして暑さを忘れるためなど言われますが、それは俗説です。 民俗学者で国文学者の折口信夫は、夏が怪談の季節になったのは、歌舞伎が夏に「涼み芝居」と称して、幽霊が出る恐ろしい演目--例えば「東海道四谷怪談」など--を上演したからだと説きます。そうして折口は、歌舞伎の夏の怪談芝居は、農村で行われていた民俗芸能「盆狂言」の伝統を引き継いでいると指摘します。 日本の夏の年中行事である「お盆」は、正月と並ぶ重要な一年の節目の行事です。お盆には、あの世から死者の霊魂が帰ってくるとされます。そこで各家では「盆棚」を作ったり、「迎え火」を焚いたりして、祖先の霊魂を迎えます。 しかしお盆には祖先の霊だけでなく、祀る人の絶えた無縁仏や、恨みを抱いた怨霊も帰ってくると考えられました。「盆狂言」はそうした浮かばれぬ死霊の苦しみと成仏を演じる、鎮魂の芸能でした。「お盆」の行事がある日本の夏は、祖先の霊魂と交感する季節であり、また怨霊の無念を語る季節、すなわち怪談の季節でもあるのです。 

 

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